先日、「北京バイオリン」という映画が公開されました。
ご覧になられた人も多いと思いますが、みなしご少年が
育ての親のもとで天才バイオリニストに成長するという感動的な
作品です。ご覧になって自分も小さい頃からバイオリンをやっていたら
よかったのになあと思われた方もきっといらっしゃるでしょうね。
さて今回はバイオリンをはじめとする弦楽器の仲間には、
子供サイズの楽器というのがあるというおはなしです。
一般に管楽器や打楽器は、楽器が大きくなればなるほど音が
低く、かつ太くなります。これは自然界の 物理の法則です。
これは弦楽器についても同じなのですが、弦楽器の場合、同じ
楽器の種類の内で、たとえばバイオリンならバイオリンとして
サイズが変わっても音の高さが変わることの無いように楽器を
作ることが出来るのです。もちろん、弦の張力が変わるのでかなり
音色やフィーリングに差はあるのですが、しかしこの性質を
うまく利用して、まだ身体の小さな子供からでもその体格に
見合ったサイズの楽器を使うことで練習が始められるのです。
演奏技法が円熟しきった感のある弦楽器は、その演奏技法の習得に
高度なスキリングを必要とします。そのため身体の成長と同時に
訓練を開始しなければ、よほどの努力家か天賦の才能でもなければ
なかなか身に付きにくいのが現実です。さらにトレーニングの開始
時期が早ければ早いほど有利なのです。ですからこの世界では
早期英才教育があたりまえのようになっており、弦楽器の世界では
子供用サイズの楽器はなくてはならない存在なのです。
さてその弦楽器のサイズですが、楽器の実際の寸法ではなく
いわゆる大人用のフルサイズを「1」、つまり「四分の四」
と考え、それより数字の小さくなる分数をつかって
あらわすことになっており、その分数のあらわしかたにも
独特の決まりがあります。原則として2の乗数、つまり
2,4,8,16,32というのを分母に使います。これはまるで
パソコンなど先端テクノロジの基礎になっている2進数を
ベースにしたデジタルの世界を先取りしているようです。
楽器の発明以来これは世界共通で弦楽器の世界全体に共通です。
このように、大きさの異なる分数楽器はバイオリンのほかに
チェロ、コントラバスにもあり、ギターも同様に分数があります。
この分数表記は、長さとか楽器の寸法をあらわすのではなく、
だいたいは楽器の胴体の容積を示しています。弦楽器の
鳴りを左右する胴体つまり共鳴胴の容積が、互いに簡単な整数比
に近くなるように設計する…というのをめやすとしています。
ですから楽器の見た目の大きさは、あらわされる分数とは、
感覚的には一致しません。容積は辺の長さの3乗に比例
しますしまた、そもそも楽器の形状が不定形であるためです。
「四分の三、二、一…」 と、順に楽器は小さくなります。
(ただし「四分の二」は分母分子を約分して「二分の一」とします)
さらに「八分の一」、そして「十六分の一」、
さらには「三十二分の一」までも作られているのです。
さすがにここまでくると楽器職人の技を誇示するといったおもむきがあります。
ほかにも「十分の一」とか「八分の七」といった中間サイズもあります。
当然、それぞれの楽器の大きさにあわせて、楽器の部品も
各種のサイズが必要で、弓はもちろん弦をはじめ駒、アジャスタ、
肩当て、ペグ、テールピースなどが製作されています。もちろん共通にしても
差し支えのないものもあり、利用可能なサイズの範囲で共用します。
参考のためにバイオリンの場合を示します。
お子様の身長の伸びに合わせて楽器のサイズを選択します。
年齢でサイズが決まるわけではありませんので念のため。
でも人種民族による体格の差や、もちろん成長の個人差もあり
ますのであくまで目安でしか ありません。また表にあるような
全種類を使ってサイズアップを しなければいけないこともありません。
要は弾きにくくさえなければいいのです。
バイオリンサイズ
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対応身長
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1/16
|
〜105センチ
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1/10
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105〜110センチ
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1/8
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110〜115センチ
|
1/4
|
115〜125センチ
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1/2
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125〜130センチ
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3/4
|
130〜145センチ
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4/4
|
145センチ〜
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